リフォーム基礎知識
防水工事のポイント
補修の方法
既存の防水層の補修方法について

ベランダ・バルコニーや屋上の防水リフォームの際は、既存の防水層の劣化状況によってリフォームの工法を見極める必要があります。
主に2種類の方法があり、劣化の具合によって「撤去型工法」か「オーバーレイ工法」を、コストや機能性など多角的に判断します。

撤去型工法(既存の防水層を撤去する方法)
特徴
・古い防水層を完全に撤去 して、新しい防水層を施工する
・下地の状態を確認できる ため、建物の劣化状況を把握しやすい
・下地補修を適切に行い、長期的な耐久性を確保
メリット
下地の劣化状況を把握し、適切な補修ができる
防水層の寿命を最大限に延ばせる
仕上がりがきれいでトラブルが少ない
注意点
既存防水層を撤去するため、コストと工期がかかる
撤去作業時の騒音や粉じんが発生しやすい
撤去後の下地補修が必要になる場合がある
適用条件(おすすめのケース)
既存防水層が 大きく劣化・損傷している
長期的な耐久性 を重視し、しっかり補修したい
建物の構造的な安全性も含めて確認したい

オーバーレイ工法(既存防水層の上に新たに防水層を重ねる方法)
特徴
・既存の防水層を撤去せずに その上から新しい防水層を施工する
・工期が短く、コストを抑えられる
・施工中の騒音や粉じんが少なく、居住中の工事にも適している
メリット
撤去工事が不要でコスト削減が可能
工期が短く、入居中の建物にも適している
騒音や粉じんが少なく、環境負荷が少ない
注意点
既存の防水層の状態によっては施工できない
防水層が重なり、重量が増加する可能性がある
下地の劣化状況を直接確認できないため、見えない問題が残るリスクがある
適用条件(おすすめのケース)
既存の防水層がまだ健全で、軽度の劣化 の場合
コストを抑えたい、短期間で施工したい
居住しながら工事を進めたい
撤去型工法 と オーバーレイ工法の比較表
項目 | 撤去型工法 | オーバーレイ工法 |
---|---|---|
工法の違い | 既存の防水層を撤去して新しく施工 | 既存の防水層の上から新たに防水層を施工 |
コスト | 高め(撤去・補修が必要) | 低め(撤去不要) |
工期 | 長め(撤去作業が必要) | 短め(直接重ねる) |
騒音・粉じん | あり(撤去時の影響) | ほぼなし |
防水性能 | 長期的に安定(下地から補修可能) | 既存防水の状態に影響を受ける |
施工後の耐久性 | 高い(約15~20年) | 比較的低め(約10~15年) |
適用条件 | 既存防水層が劣化している場合 | 既存防水層が比較的健全な場合 |
どちらの工法を選ぶべき?
すでに水漏れが発生していたり、防水層が大きく劣化・損傷している場合は「撤去型工法」を選択する必要があります。
また、「撤去型工法」の場合には、施工後の長期的なメンテナンスコストの削減も期待できます。
一方で、既存の防水層が比較的健全な場合は、コストを抑え、短期間で完了する「オーバーレイ工法」を選択することもできます。
材料の種類
材料別の工法について
ウレタン防水工法
防水工事の中でも最もポピュラーな工法
防水層が軽量であり建築物に負担をかけない。
ウレタン塗膜が複雑な収まりにも容易に対応し、防水面を継ぎ目なく形成。
トップコートを定期的に塗り替えることで、防水層を紫外線劣化から長期間にわたり保護。
塩ビシート工法
仕上がりが美しく、ゴムシート防水に比べて耐久性があり長期間にわたる防水工事施工時の状態・鮮やかな色彩を保持。
シート間のジョイントを接合するため、溶着一体化させることで優れた耐久性を実現。
ゴムシート防水工法
屋上防水工事によく使われる防水工法。
ゴムシート接着剤を用いて下地に固定する工法。
コストを抑えられるのが特徴だが、注意点としてシート端部の処理には注意が必要。
FRP防水工法
他の樹脂防水工事に比べて圧倒的な耐性があり、防水層を多彩な塗装性・紫外線から建物を長期的に保護。
従来の塗膜防水に比べて硬化時間が極めて短いことを特徴とするため、短い工期で施工が可能。
防水工事の種類まとめ
いずれの工事も耐久年数は約10年
材料による耐久年数には大きな差はありませんが、コストや施工時間、仕上がりの美しさなどが異なります。
いずれの工法でも定期的なメンテナンスを行うことで防水機能をより長く持たせることが可能です。
防水リフォームのチェックポイント
防水層の劣化状況について
排水不良

症状:屋上・ベランダに水がたまる
危険度
状態
排水に問題があり、水がたまってしまっている状態です。
屋上やベランダの防水層は水をためる目的で作られていないため、塗膜が劣化し雨漏りの原因になります。
また、損傷した箇所から雨水が侵入し、建材へ深刻なダメージを与える原因になります。
シートの浮き上がり

症状:防水シートの剥離・浮き上がり
危険度
状態
屋上やベランダの防水シートが浮き上がり、下地との間に大きな空間が出来てしまう状態です。
下地と防水層の間にたまった空気には逃げ場がなく、シートが破れたり剥がれてしまう原因になります。
ひび割れ

症状:防水層のひび割れ
危険度
状態
防水層がコンクリートの伸縮に追いつけず、躯体だけでなく表面の塗膜までひびが発生している状態です。
防水膜が劣化し、水分が侵入してしまうため様々な悪影響を及ぼします。
植物の繁茂

症状:屋上・ベランダに植物が繁茂してしまう
危険度
状態
植物の根は非常に強く、コンクリートのすき間に侵入し繁茂することがあります。
防水層・躯体の中まで入り込み、塗装や防水層の浮き上がり、躯体のひび割れなどが発生する原因になります。
塗装のくすみ、はげ

症状:塗装がくすんでいる・剝げている箇所がある
危険度
状態
防水層の劣化により防水機能が低下している目安になります。
経年劣化による場合や、歩行や風雨による摩擦が原因の場合もあります。
防水機能が低下しているので、建物にダメージが発生する原因になります。
塗膜・シートの破れ

症状:塗膜やシートに破れ・剥がれ・亀裂が発生している
危険度
状態
防水層が破れて穴が開いてしまっている状態です。
風雨や歩行時のダメージのほか、鳥や野生動物が原因の場合もあります。
雨水が入り込み、防水層の下にたまってしまうことで破れた箇所から離れた場所で雨漏りを起こすこともあります。
防水工事のまとめ
屋上・ベランダのリフォームのポイント
劣化状況と工法
撤去型工法
長期耐久性重視!
劣化が激しく、しっかり補修したい場合に最適
オーバーレイ工法
コスト・工期重視!
劣化が比較的軽度で、既存の防水層を活かした手軽な工事
主な防水材料と特徴
ウレタン防水
施工しやすく、継ぎ目のない仕上がり。軽量で建物への負担が少ないが、定期的なトップコートの塗り替えが必要。
塩ビシート防水
耐久性が高く、美しい仕上がりが特徴。シートを溶着することで防水性を確保。
ゴムシート防水
コストを抑えやすく、主に屋上防水に使用される。シート端部の処理に注意が必要。
FRP防水
高い耐久性と耐候性を持ち、紫外線にも強い。硬化時間が短く、短工期で施工可能。
まとめ
屋根やベランダの防水工事は、建物を雨水の侵入や劣化から守る重要な工事です。
防水工法・材料にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や適した用途があります。
どの工法・材料を選択するかは実際に現場の状況を確認して判断することが重要です。
具体的な診断やお見積りはお気軽にお問い合わせください。